生物の構造色
自然界には輝くような色の生物が沢山います。昆虫ではモルフォチョウや玉虫、鳥ではクジャク、ハチドリ、
魚では熱帯魚を中心にネオンテトラやルリスズメダイ、他にはタコ、イカ、アワビの貝殻、さらに
植物の種子や花びら・・・・。
これらの生物が持つ鮮やかな色は、構造色と呼ばれる発色の仕組みを持っています。
色素による吸収の色ではなく、光の波長程度の微細な構造が、干渉や散乱などの光学現象を起こして着色しています。
例えば下のような微細な構造体が利用されていることが分かっています。左から薄膜構造(ドバト)、多層膜構造(タマムシ)、
円柱の二次元配列(クジャク)、右端がモルフォチョウの鱗粉にある構造です。
色素による色が、残したい色以外の色を吸収することで、着色しているのに対して、
構造色は特定の波長の光を積極的に反射させることにより、色をつけていると言えます。
しかし、実際の生物が利用する構造は大変複雑で、波長大きさ程度のミクロな構造はもちろんのこと、
マクロなサイズの構造や色素の併用など、様々な要素をうまく組み合わせて、独特な興味深い光学効果を実現しています。
近年、バイオミメティクスという分野が成長しています。
自然界の生物が持つ工夫の原理を学び取り、
模倣することで工業的な応用を試みる分野です。材料構造色研究は長い進化の過程で得られた生物の知恵を学び取っているのです。
構造色は学際的な研究対象です。学び取った輝きを何かに利用できないでしょうか?
輝きは生物にとってどんな役割を果たしているのでしょうか?
生き物が成長の過程において、微細な周期構造を生み出すとき、一体どのようにして細胞は働いているのでしょうか?
そこには、どのような物理法則がからんでいるのでしょうか?様々な疑問を含みながら、構造色研究は発展しつつあります。